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2024年3月改正におけるJR北海道の一部特急列車の全車指定席化の影響

まとめると

JR北海道が2024年3月改正で一部の特急列車を全車指定席化するが、「普通列車の本数が少ない区間であるにもかかわらず、特急の短距離利用者の負担増が大きすぎるうえに救済もない」という区間が多く、その区間での短距離利用者がJR離れすることが容易に想像できる

経緯

JR北海道は2023年11月15日に、札幌〜東室蘭・函館方面の特急「北斗」「すずらん」および、札幌〜帯広・釧路方面の特急「おおぞら」「とかち」を、2024年春のダイヤ改正より全車指定席とすることを発表するとともに、ネット予約「えきねっと」での割引料金制度を拡充することを発表していた。
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20231115_KO_reservedseat.pdf

その後JR北海道は2024年1月23日に、これらの列車における新たな割引料金の設定を発表した。
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20240123_KO_otokunakippu.pdf

さて、最初の発表において発表がなかったため私が気にしていたこととして、

  • JR東日本は、一部の特急列車を全車指定席化した際に「短距離での特急料金を引き下げる」対応を取ったが、JR北海道はそれはしない(これまで自由席で利用していた人は、えきねっとでの割引を考慮しなければ純粋に値上げになる)のか
    • なおJR北海道は、指定席特急券は自由席特急券の530円増しとなる

というものがあったのだが、2つ目の発表を見てみると

  • 全車指定席化による指定席特急料金の引き下げは行われない
  • えきねっとでの割引対象区間がかなり拡充されているとはいえ、基本は既存の割引乗車券(紙で発行される往復乗車券・回数券)を踏襲したものであり、既存の割引乗車券が存在しない区間への拡充はほとんど行われていない[1]
  • このため、えきねっとでの割引が存在せず、既存の割引乗車券もなかった区間では、純粋な値上げになる
    • 特に、北海道では普通列車の本数が少ない区間も多く、短距離でも特急に乗らざるを得ない需要が一定量あるが、そこが極端な値上げとなるということが容易に予想される

というものであった。

そこで、この影響を「北斗」「すずらん」の各駅間について検証する。

おことわり

運賃・特急料金は手打ちなので間違っているかもしれません。(データとして取りやすいものがなかった…)

計算方法

特急「北斗」の全停車駅の組(「札幌〜南千歳」完結の乗車と「新函館北斗〜函館」完結の乗車は除外)について、以下の費用を比較した表を作成する。

  • 変更前:一律で「自由席特急料金での正規の費用」とし、現存の割引乗車券は考慮しない(現存の割引乗車券については考察で述べる)
  • 変更後:「特急トクだ値1」が設定されている区間ではその15%割引、設定されていない区間では正規の「運賃+指定席特急券」の金額

このように選んだのは以下の経緯です。

  • 上記の想定からして、「早いうちから予定を決めて乗車するのではない」状況を優先的に考慮したかった
  • そうなると、現状では割引乗車券か、それがなければ多くの区間で特急自由席を利用するだろう
  • えきねっとの割引は「特急トクだ値14」(14日前までに予約)と「特急トクだ値1」(1日前までに予約)があるが、上記の想定からして「特急トクだ値1」で計算する
  • 特急トクだ値1は、「すずらん」だと最大30%の割引があるのに対し、「北斗」の場合は最大15%の割引しかない。「すずらん」は本数が限られているので、こちらで想定するとする

計算結果

特急乗車の料金(運賃+特急券)の変動
(クリック/タップで拡大)

HTMLでも閲覧いただけます。(Excelで制作したためHTMLソースはごちゃごちゃしています)

考察

  • 発着駅が「札幌・新札幌・南千歳のいずれか」か、「函館・五稜郭・新函館北斗のいずれか」であれば、そこまで大きな負担増にはならない。
    • 特に長距離だと、「自由席特急料金での正規の費用」に比べて1割程度引かれていることもある。ただこれらの区間はもともと割引乗車券が存在していた区間なので、それと比べればあまり変わっていない。
  • 問題が大きいのは、えきねっとの割引から外れる「苫小牧〜大沼公園で完結する区間での乗車」(「苫小牧〜東室蘭」は除く)と「森・大沼公園〜函館方面の乗車」。
    • 特にその区間で25km以下だと、もともと自由席特急券で320円で乗れていたのが、指定席特急券になると850円に引き上がるので、比率で見ると「6割以上増加」という極端な負担増となる
    • 「森〜函館」や「東室蘭〜伊達紋別・洞爺」といった区間は、地区の大都市(前者は函館、後者は室蘭)とその周辺都市を結ぶ需要が見込まれる区間であるうえ、普通列車が少ないため特急利用も一定量あったと思われるが、今回の改定で大幅な負担増となるため、JR離れが懸念されるところである
      • 例えば、「森〜函館」1760円→2290円で30%増、「洞爺→東室蘭」は1490円→2020円で35%増、「伊達紋別→東室蘭」は860円→1390円で61%増である。
    • 森・大沼公園については、苫小牧方面へは「新函館北斗発着のえきねっと」を使えば安くなる場合があるため、その場合は負担は抑えられる。

なお、JR北海道指定席特急券料金は以下の通りである。

  • 25kmまで:850円
  • 50kmまで:1160円
  • 100kmまで:1680円

しかしこのような状況を踏まえると、せめて25kmまでの区間は(乗車券と特急券を合わせた)負担増が30%程度、50kmまでの区間は負担増が20%程度に抑えられるように特急料金を改定すべきではないだろうか。具体的には、25kmまでは300円引いて550円、50kmまでは200円引いて960円くらいには抑えておくべきではないだろうか。


  • [1]実質的には、追加になったのはおそらく、「【白老〜洞爺の北斗停車駅(東室蘭除く)】〜函館」という区間のみでないかと思います。また紙の割引乗車券では函館発着がある一方で五稜郭発着や新函館北斗発着というものがなく(現状ではその区間でも函館発着で買う必要があった)、その差で安くなるケースもあると思われます。